対人恐怖と対人緊張~

 

■対人恐怖

対人恐怖とは他人(知っている人あるいは知らない人)と接する場面で必要以上に強い不安や精神的緊張から“場にそぐわない発言や行動をして,笑われるんじゃないか!?”“軽蔑されるんじゃないか!?”“不快な思いをさせて、嫌がれるんじゃないか!?”“人の視線が気になる!?”などと、人と接する以前から自分一人で想像してしまう不安定な精神状態のことです。

 

その結果、人と接すると様々な自律神経機能不全症状(動悸・胸苦しさ・息苦しさ・発汗・吐き気・胃痛・腹痛・下痢・めまい・ふらつき・耳鳴り・赤面・瞼の痙攣・滑舌不良・手足のしびれ・手足の震え・全身のしびれ・頭痛・肩凝りなど様々な症状)を伴う場合が多いです。

 

このため結局、自己規制をして、人と接しないように自分で作りあげた用事や体調不良を言い訳にして、“外出しない”“出席しない“”出社しない“などの回避行動(人と接するのを極力避ける自己防御行動)をして、対人関係から出来るだけ身を退こうとして引きこもりがちとなり、行動しないことになってしまいます。

 

島国として海に囲まれ孤立し、地続きの諸外国と比べ他民族との交流も少ない日本人には対人恐怖的な心理が潜在的に存在するとも言われています。

 

これは誰にもある心理なので精神疾患までには至っていませんので、心療内科医や精神科医との面談と併せて、不安や緊要や恐怖を和らげ他人の評価など気にならなくなる軽いお薬(抗うつ剤SSRI・SNRIでは無く依存も副作用も殆ど有りません)などで2~3ヵ月から半年で自分自身の気持ちから、こんなことは自分だけの異常なことでは無いんだと確認し安心出来るようになります。

 

だから自然に他人と接しても不安や緊要や恐怖を克服して、自信を持って対人関係を構築できるように成って行きます。しかし、お話だけでは、理解しても直ぐには恐怖を克服して行動には至らないので、先ほど説明しました軽いお薬を併用されて行動することに慣れて行きましょう。

数カ月でお薬の補助をされなくても自信を持って対人関係を積極的に造り上げ、楽しめるようになりますよ。

 

■対人緊張

対人緊張は対人恐怖と異なり、精神科用語では無く私たちが日常的に使う一般用語です。精神的緊張や不安には変わりませんが、対人恐怖ほど発言や行動に制限を受けずに出社したり、ママさん会や学級参観にも出席したりも出来ます。

 

しかし、対人恐怖とは一線を画すのは、他民族との交流云々よりも自己達成力、自己完全欲の思いがより強く反映されていると思われます。以前より日本では“あがり症”と言う表現が有りますが、この心情としては“私も一生懸命やってきた。だからこの場では絶対に恥を掻かずに上手くこなしたい”と言う気持ちが強く成りすぎて、緊張が一気に高まった結果として、赤面症、吃音、声が震える,発汗、異常に喉が渇く、手が震える、などの症状(自律神経機能不全の初期症状)となって表われてしまいます。その時に“一回や二回くらい失敗したり、恥を掻いたりは誰でもするんだから次に上手く出来れば良いじゃない!!”と語りかけてくれたりする両親とかの適切なアドバイスが有ればその状況から脱出出来ます。

 

またスポ―ツ選手などは監督やコ―チから“失敗から学んで次は相手を見返してやれ!!”くらいの激を飛ばされますのでイチロ―選手や北島康介選手や錦織圭選手のように世界№1の過酷な普段の練習を経て試合や大会をリラックスして緊張を楽しめるようなアスリ―トも出て来ました。

 

とても頼もしい日本の若者たちは世界中のあらゆる人々と会話や食事や行動を楽しんでいます。しかし私も含め、まだ日本の多くの方々は、この緊張を克服出来ていないように思われます。例えば、学級発言、ママさん会・マンション自治組合・町内会発言、学会発表、会社の朝礼発言、会社の上司・同僚・部下との会話や会議での発言、プレセンテ―ション発表、新しく出会った異性との会話・食事・カラオケなどなど数え上げたら、きりが有りません。もちろん“あがり症”を自認する自己完全欲の強い私自身も全く同じ状況です。

 

心情としては、これだけ準備したし、経験を積んできたんだから、“上手く発言や行動したい!!”そして、さすがですね!と思われたい。“失敗して恥を掻きたくない!!”優しく分かりやすくて丁寧な説明でした!と思われたいと言う気持ちが強くなり、緊張し過ぎて笑顔でお話しを伺えない時はとても申し訳ありませんと言う気持ちで一杯になります。

 

 

~対人恐怖と対人緊張の治療~

 

基本的には対人恐怖の項目で記載致しましたお話とお薬の治療を行ないながら、患者さま自身から、ご自身は病気では無く“1回や2回ぐらい恥を掻いたくらいなら、次に上手く行けばいいんだよね!?”とサラリと次に来る機会を待ちます。

 

その機会を楽しみに受け入れられるように患者さま自身の“心のこだわり・不安・緊張・恐怖”から発症する自律神経機能不全への負の連鎖を断ち切り、お薬を飲みながらでも“今まで出来なかった人との繋がりや人混みへの外出も、少しずつ出来るように成ってきたよね!!”と患者さま自身から、“自分も行動すれば出来るんだ!!”という自信を獲得して成長されて行き、行動範囲が広がり、お薬からも卒業されることが、精神科医としての私の切なる願いですし、何物にも替えがたい思いです。

 

当院のデイケア等を利用されて、スタッフ(臨床心理士・精神保健福祉士・看護師)などと相談されて、参加されている他のメンバー様と対人恐怖や対人緊張を克服できるようにデイケアに参加して人間関係を作り上げることも効果的だと思われます。

 

■お薬について

当院での、お薬は抗うつ剤(SSRI・SNRI)とは異なり、不安・緊張・恐怖を和らげ、めまい・ふらつき・耳鳴りも和らげ、吐き気も抑え、衝動性も抑えてくれます。もちろん副作用や依存性が少なく離脱し易く、数カ月で終了する予定で処方しております。

 

上記でふれましたけれど、対人恐怖・対人緊張では自律神経のバランスが崩れますので、自律神経のバランスを整えるほんの少量のお薬と併用しますと動悸・息苦しさ・発汗・赤面・瞼の痙攣・滑舌不良・手足のしびれ・手足の震え・全身のしびれ・頭痛・肩凝り・腹痛・下痢など様々な症状(自律神経機能不全)に非常に効果的です。

 

■その他の治療法

(対人恐怖・対人緊張は心の不安定さから、症状として自律神経のバランスが崩れる:自律神経機能不全)は以下に記載しました。

 

自律訓令法の実際:佐々木 雄二;創元社(九州大学の心療内科で研究され、現在、筑波大学の心理学の教授 DVD&CD)JR川崎駅東口のアトレ6階の有隣堂のサ―ビス・コ―ナ―に川崎メンタル・クリニックで依頼しています。

 

ヨガの達人の境地になると本来、本来、自分ではコントロ―ル出来ない自律神経をコントロールし不安・緊張・恐怖を和らげ、自律神経機能不全を改善させられると言われており、これをドイツの精神科医シュルツが分析・暗示療法として開発し佐々木 雄二 先生が確立されました。

 

DVD(28分)を自宅で週2回くらい観られて、自身の気になる症状はAppleやSonyのi-pod などに集中してリラックスしたいパ―トをダウンロ―ドをして、いつでも聞ける状態にされて下さい。会議やプレセンテ―ションの前や常に聞いてリラックス出来るようにしておいて下さい。これにより動悸・息苦しさ・発汗・滑舌不良・吐き気・手の震え・めまい・下痢の改善を図り、不安・緊張・恐怖などから生じる前記の症状を解消して行きます。但し、ダイエットと同じようで、中々、継続することは難しいと言われる患者さまも多いです。

 

 

対人恐怖や対人緊張と自律神経機能不全との関連性については様々な神経症の分類の中に分かれて部分的に含まれていると思われます。
世界保健機関(WHO)や米国精神医学会分類との間に見解の相違も有すること、前記しました様に日本人独特の他民族との交流が少なかったという歴史から、日本の人々にも総て当てはまるのか当てはまらない場合もあるのかは、個々人により異なると思われます。自律神経機能不全症状が表われる各神経症は不安や抑うつを伴う場合も多く、その項目もご参考にされて頂いたら幸いです。

川崎メンタルクリニック